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マダガスカルの自然と動物:キツネザルたち



NHKスペシャル「ホット・スポット 動物たちの最後の楽園」マダガスカル編を見た。五回シリーズの第1回目だ。福山雅治さんによる全体の導入編については、先稿で紹介したところだが、いよいよその各論編が始まったわけだ。

マダガスカルの自然を彩る象徴的なものは高さ30メートルにも及ぶ巨大なバオバブの木だ。ところがこの木は、マダガスカルのほかにアフリカとオーストラリアの一部にも見られる。それらは1億8千年前に存在していたゴンドワナ大陸の名残だ。この巨大な大陸が分裂した後も、そこに映えていたバオバブの木が、それぞれの地で現代まで生き残ってきたというわけだ。

一方マダガスカルを代表する動物は、キツネザルの仲間だ、現存するのは80種類にも上る。ところが、アン・ヨーダ博士らの研究によれば、これらのキツネザルはすべて同一の祖先から分かれた兄弟たちだというから驚く。

ゴンドワナ大陸から分裂したあとのマダガスカルには、恐竜たちが住んでいた。しかし6500年前に恐竜が絶滅した後は、マダガスカルには昆虫のほか、両生類や爬虫類しか生息していなかった。そこへ6000万年前に、ネズミキツネザルがやってきた。彼らはサイクロンによってなぎ倒されたアフリカの木に運ばれて、マダガスカルの浜辺に漂着したのだった。

しかしアフリカからマダガスカルまでの長い距離をどうやってしのいだのか。この疑問に対しては、面白い回答が用意される。ネズミキツネザルは、食料が乏しくなると体温を下げ、眠り続けるという、冬眠に似た習性を持っている、その習性があったおかげで、何も食べないで、何ヶ月もかけて海を渡ることが出来たというわけだ。

このネズミキツネザルから、100種類近いキツネザルの仲間が分化した。中にはゴリラを思わせるような大型のサルもいたが、それらは人間によって絶滅に追いやられた。

現存するキツネザルの仲間は、みな小型の猿だ。80種類にも分かれたのは、マダガスカルの自然の多様性に応じて、それぞれが適応を重ねた結果だ。彼らの多くはネズミキツネザル同様夜行性だが、インドリやチャイロキツネザルのように、昼行性のものもある。先稿で紹介した、福山さんにラブコールしたサルは、インドリだ。

マダガスカルの食物連鎖の頂点にいるのは、フォッサというマングースの仲間だ。マングースといえば普通はずんぐりむっくりした体形を連想するが、フォッサは豹のような体形をしている。天敵のいない状態で、肉食獣として進化した結果、ねこ科の食肉獣と同じような体形になったのだと考えられる。

このフォッサは、面白い繁殖行動をとる。メスをめぐってオス同士が激しく争い、勝ち残ったオスがメスと結ばれるのは、他の大部分の動物と共通なのだが、負けたオスにもチャンスがある。メスは自分の周りに集まったオスには、ワケ隔てなく交尾のチャンスを与えるのだ。

驚いた話で、ほかにこのような行動をする動物はほとんどみられない。

これは動物繁殖学にいうプロミスキューイティの問題と重なる。メスが淫乱な場合、オスが自分の子孫を確実に残すためには、他のオスを叩きのめしてメスとの交尾の機会を取り上げたり、或は自分の性器を肥大化させて、メスが受精する程度を高めたりするものだが、フォッサの場合にはどうなっているのか、番組の内容からは、伺うことが出来なかった。

マダガスカルは大陸から隔絶した島なので、ガラパゴス諸島同様、独自に進化した動物がいる。なかでもカメレオンは70種類も確認されている。左右の目を別々に動かしたり、長い舌で遠くにいる昆虫を捕まえたり、なかなかユニークな生き方をしている。(上の映像はワオキツネザルの群)







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