動物写真を楽しもう〜壺齋散人の生命賛歌 |
HOME|ブログ本館|東京を描く|あひるの絵本|美術批評|フランス文学| 万葉集|プロフィール|BBS |
![]() |
先稿「人イヌにあう」の中で、犬の祖先は狼から分かれた蓋然性が高いこと、犬の家畜化は一番古く見積もっても1万7000年前のことらしいと述べた。その後の研究で、犬の祖先は狼に間違いないこと、その家畜化は2万6000年前に遡ることが分かってきた。 そうした最新の研究成果を、イギリスの動物学者ブラッドショー博士が一冊の本にして出版した。"In Defence of Dogs: Why Dogs Need Our Understanding" By John Bradshaw 初期の犬の家畜化を物語るものとして、フランスのアルデーシュ地方のショーヴェ洞窟で発見された足跡が参考になる。これは10歳くらいの男の子とそれに付き従う犬の足跡だと推定されたが、犬のほうは、半分は狼らしい特徴をとどめていた。炭素分析の結果、この足跡は2万6000年前のものと特定された。このことから、犬の祖先は2万6000年前に狼から分化するかたちで登場したと結論付けられたわけだ。 先稿では、犬の祖先は1万7000年前くらいに、東アジアで登場したと述べていたので、それとの整合性をどう考えるか、今後の課題となろう。 遺伝子研究の分野でも、大きな進歩があった。狼と犬とはなんと99.6パーセントもの遺伝子を共有していることがわかったのだ。人間とチンパンジーの遺伝子の共有率は96パーセントだから、犬と狼とがいかに近い関係にあるか、改めて判明したわけだ。 だからといって、犬と狼とが双子のように似ていると結論付けるわけには行かない。行動のパターンをはじめ、異なった部分が多いのだ。 それはおそらく、人間が犬の品種改良を進めてきた結果、多くの犬が人間の期待に沿ってデフォルメされてきたことの結果ではないかと、博士は見ている。その品種改良はまた、犬の間に近親相姦のような事態を蔓延させ、それが犬の種としての弱体化をもたらしている側面もある、そう博士は警告してもいる。(写真はEconomist から) |
|