動物写真を楽しもう〜壺齋散人の生命賛歌
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札幌中心部にエゾシカ出現



札幌の中心部にエゾシカが出現し、市街地を猛スピードで走り回って、道行く人を驚かせたそうだ。(上の写真:毎日新聞提供、和田浩幸撮影)

このことの背景にはエゾシカの数が激増している事態があるらしい。エゾシカはもともと道東地域を中心に生息し、1993年時点で20万頭程度であったものが、ここ数年急速に数を増やし、いまでは全道で52万頭を数えるまでに到った。それに伴い各地で農作物の被害が広がるようになり、挙句の果ては市街地にまで侵入してきたというわけだ。

エゾシカの繁殖力は非常に強い。一頭のメスは2歳ごろから10歳ごろまで毎年一頭の子を生む。天敵がいなければ、短い期間に鼠算式に増える。昔はハンターの数も多く、また肉が食用になっていたこともあって、エゾシカの数は抑制されていたが、近年は鳥獣保護の動きやそれに伴うハンターの減少によって、繁殖するのに都合のよい条件が整った。このままの勢いだと、北海道はエゾシカの天国になるかもしれない。

これに対して道の当局はエゾシカの個体数を減らす手立てに頭を悩ませている。いままでは道内のハンターに呼びかけて、主にメスの個体を狙い撃ちにしていたが、この方法だと、自ずから限界がある。今以上に増やさないためにも毎年7万6千頭以上駆除しなければならぬのに、ハンターの事情がそれに及ばないからだ。

そこで特別プロジェクトを立ち上げて、集中的にエゾシカを駆除する方法も考えられている。そのためには夜間における狩猟や消音銃の解禁といった方策も必要になる。これらはいずれも鳥獣保護や住民の安全の見地から禁止されているものだが、瀬に腹は変えられぬといったところだろう。

捕獲したエゾシカの処分にも工夫が要るだろう。ただ殺してしまうのでは能がない。さいわいエゾシカはダイエット食としての可能性が高い。エゾシカの肉は脂肪分が豚肉の30パーセントしかなく、鉄分はラム肉の三倍もある。健康食として優れているわけだ。

欧米では祝日のご馳走として鹿の肉を食う習慣があるようだ。日本でもエゾシカを積極的に食うようになれば、鹿の個体管理を資源管理に結びつけることが出来る。

ところで写真のエゾシカがその後どのような運命をたどったか、残念ながら筆者には知るところがない。







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