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動物たちの最後の楽園:奇跡の島・日本



NHKスペシャル「ホット・スポット:動物たちの最後の楽園」第6回は「私たちの奇跡の島」と題して、日本列島に展開する豊かな自然とそこに生きる動物たちを特集していた。

日本列島は地球上の陸地の400分の一を占めるに過ぎないのに、亜熱帯から寒帯にかけての変化に富んだ季節とそれを背景にした豊かな自然、そしてそこに生きる多様な生き物が展開している。生き物の種類は9万以上に及ぶ。

日本はホットスポットと呼ばれるに相応しく、世界的に見て非常に貴重な動物たちの宝庫だ。その代表はニホンザル、オオサンショウウオ、ゲンジボタル、イリオモテヤマネコなどだ。

ニホンザルはサルの仲間ではもっとも寒冷な土地に住む。番組は上高地に住み着くニホンザルの集団を追跡していたが、彼らは雪に閉じ込められながらも、木の皮をはいで食料にしたり、温泉に使って寒さをしのぐ知恵を身につけている。また渓流に漬かっては石の下に潜んでいる川虫を引っ張り出したり、水の中にもぐって川底に落ちている木の実を拾って食ったりする。こんなことをするサルは、世界中他にはいない。

もともと熱帯から亜熱帯のジャングルに住んでいた彼らの祖先が日本にやってきたのは今から50万年前だ。当時日本列島はアジア大陸とつながっており、インドなどにいたアカゲザルの仲間が陸伝いに日本列島に渡ってきた。その後日本列島が完全な島になると、行き場を失った彼らは日本の自然に適応することを迫られた。こうして世界でもっとも寒冷な土地で暮らすサルが生まれたわけだ。

オオサンショウウオは世界でもっとも巨大な両生類といわれ、体長は1メートル以上にもなる。3000万年前から現在のままの形を保つ生きた化石とよばれている。このほかにも、日本にはカエルなどの両生類が数多い。豊かな水が両生類の繁栄に大きな恵みとなっているのだ。

ゲンジボタルは、蛍の仲間としては珍しく、水生の生き物だ。蛍は世界に2000種類いるといわれるが、そのほとんどは森で暮らしている。やはり日本の豊かな水が、水の中で暮らす蛍を生んだのだろう。

イリオモテヤマネコはその名のとおり、西表島に生息する山猫だ。いまは100体にまで個体が減少し、絶滅が危惧されている。この山猫はマングローブ林に生息し、主に魚をハントして生きている。この島には鼠がいないので、苑大体として魚を取るようになったわけだ。

このように多彩な生き物が生息できるわけは、日本列島の自然の豊かさにある。日本列島が位置する緯度は、地球規模で見ると乾燥が進んだ地域であるにもかかわらず、湿潤な気候に恵まれている。これは日本列島付近を通っている海流の影響によるものだ。

今から1700万年前に太平洋上の暖流の一部が日本列島の東側を流れるようになった。黒潮の誕生である。その後黒潮から分かれた潮の流れが対馬海峡を通って日本海に流れ込むようになった。

黒潮は日本列島を温めると共に、温まった海水が膨大な水蒸気を形成し、それが雨となって日本列島の太平洋側に降り注いだ。一方対馬海流のほうは日本海側に大量の水蒸気を提供し、それが冬季に大量の雪を降らせるようになった。

こうして日本列島は類まれな豊かな自然とそこに暮らす多様な生き物に恵まれるようになったわけだ。これはまさに奇跡といえる。日本列島は「奇跡の島」なのだ。







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