動物写真を楽しもう〜壺齋散人の生命賛歌
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クマの大量出没



上の写真(斜里町提供)は、街中をさまよい歩くクマの親子、今年はこの親子のように、街中に出没するクマの姿が目立った。朝日新聞によれば、十月下旬までに2400頭が捕まり、うち2100頭が捕殺された。この親子も、目撃されたすぐ後に射殺されたという。

クマの出没は近年増えているそうだ。これも朝日新聞によれば、2004年には2300頭、2006年には4600頭が捕殺されている。一方、クマに襲われて怪我をする人や、死んだ人の数も馬鹿にならない。今年は100人が負傷し、4人が死んだそうだ。

こうした事態の背景には、いくつかの事情が考えられる。

第一に、クマの食糧として大切なクヌギやミズナラのどんぐりが不作だったことだ。冬眠を控えたこの時期のクマはどんぐりを大量に摂取して体内に脂肪を蓄えるが、山の中にどんぐりが足りないと、食料を求めて人里に出没するというわけだ。

第二には、里山の荒廃があげられる。里山は人間にとっては、キノコやマキの供給地として大事にされてきたが、近年になって、人間の手が入らず、荒廃するようになった。この里山は、クマなどの野獣にとっては、人間社会との緩衝地帯になっていた、これが荒廃することで、山から下りてきたクマがストレートに人里に現れるというわけだ。

第三に、猟師が減少し、狩猟があまり行われなくなったために、クマは人に追われる恐怖を体験する機会が減り、その結果人を恐れなくなった。それがクマたちを街中に出没させる要因ともなっている。

こうしたわけで、近年クマが出没するようになったことの背景には、いくつかの事情が絡み合って作用しているといわれる。

日本は、先進国の中では、クマを始め野生動物との共存を成立させてきた国だった。欧米諸国では、ほとんどの野生動物が絶滅したことを考えれば、貴重な例だったといえる。

だが近年のクマの運命を考えると、このままでは絶滅しかねない勢いだ。本州以南におけるクマの生息数は、せいぜい三万頭が上限だろうと言われているから、近年のクマの捕殺数がいかに異常かがわかるのだ。

大きな視点からみれば、動物たちが生きられる世界は、人間にとっても住みよい世界である可能性が高い。クマのような大型動物が絶滅に向かうというのは、人間にとっても不吉な兆候だといえるのではないか。







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